須田慎一郎:産経新聞社
金融監督庁の目黒謙一検査官がUFJの検査に入ると決まった時、金融業界だけでなくマスコミも固唾を呑んで注目したものだ。
もっとも厳格な検査を行うとされる目黒検査官に対するUFJの怯えは、資料の隠蔽を招き、内部告発によるその露見が、検査忌避容疑での副頭取を含む担当者の逮捕につながり、三菱東京フィナンシャルグループへの身売りという結末を生んだ。
著者は検査の進行中から周辺取材を続け、金融監督庁とUFJとの暗闘の内幕をつづっている。
この間の事情を理解するための補助線として著者が注目するのが、竹中平蔵大臣の思惑と、派閥抗争をエネルギーとしてきた三和銀行経営陣の体質である。
興味深いのはUFJの生き残りに名古屋財界が非協力的で、その理由として東海銀行勢を制圧した三和銀行勢への反発が背景にあるとの指摘。
たしかに、トヨタがUFJ(東海銀行)を救わなかったのは何故かという設問は、あまり言及されていないものの、興味深いテーマではある。
私事になるが、UFJ発足準備に一部かかわりを持っていた。
東海銀行とあさひ銀行がマルチリージョナル銀行を標榜して統合の準備を進めていた段階にはじまり、三和銀行が突如統合計画に参入した結果、あさひ銀行が三和との不和から離脱の末、三和と東海でUFJの統合を実現する直前までの段階だ。
東海とあさひとの牧歌的な勢力争いに参入した三和は、強引なリーダーシップでイニシアチブをとった。
ほんの短期間瞥見したにすぎないが、著者の描き出す三和的体質は、そんな思い出を呼び起こし、不思議なリアリティを感じさせてくれる。