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2004年10月31日(Sun)
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キャリア転機の戦略論

榊原清則:ちくま新書

著者の榊原氏は慶應義塾大学総合政策学部(SFC)教授。日本における経営戦略論の代表的な研究者の一人である。

当然、多くの論文をものし、数々のアカデミックな業績を挙げているわけだが、同時に新書本の書き手としても類まれな力を持っていると思う。
既刊の、中公新書の企業ドメインの戦略論、日経文庫の経営学入門(上・下)はぼくのお奨め本だ。

今度の「キャリア転機の戦略論」もその期待を裏切らない。
著者がかつてロンドンビジネススクール準教授として教鞭をとっていたときに現地で行った多くのキャリアパスについてのヒアリング調査の中から、12人のケースを取り上げ、その職歴の変遷とその背景にあるキャリア形成戦略を考察している。
12人は著者の当時の交友関係の中からヒアリング対象に選ばれただけに、当然、英国社会の代表性はない。
しかし、年功序列型キャリア形成の残滓を引きずった日本での「常識」と、英国社会でのそれとの違いについての論点がくっきりと浮かび上がってくる。

幸い、ぼくは著者がまだ一橋大学教授であったころから10数年にわたる知己を得ている。
その間著者は、ミシガン大学日本研究センター、本書のベースとなるヒアリングを行ったロンドン大学ビジネススクール、慶應義塾大学総合政策学部、科学技術庁科学技術政策研究所、再び慶應義塾大学総合政策学部といくつかの職場を経験している。
著者自身が多くのキャリアを積んでいることが、ヒアリング対象の深層心理への理解を深めているようだ。


日本でも最近、若年層のフリーターが予想を上回る増加を示し、一方で中高年層のリストラは進み、従来の年功序列型キャリア形成発想の抜本的見直しが迫られているわけだが、一足早くウィンブルドン化により雇用の流動化が進んだ英国での実態は、今後の日本社会にとってのひとつの参考と言えるだろう。

この4月の国立大学の独立行政法人化をはじめとした文部科学省の一連の「遠山改革」が直接の契機なのだろうか、日本の大学のあちこちで「専門職大学院」の開設や検討が進んでいる。
この動き自体は、本書で示されている英国の社会人教育制度とベクトルも一致し望ましいことなのだろう。
しかしながら、日本における専門職大学院設立の動きの問題点は、開設してもすぐにペイする見込みがない(規模や内容にもよるが、おおむね年間赤字2億円程度を覚悟しなければならないようだ)ためか、「どのような専門職大学院が求められているのか?」という問いかけより、「どうすれば文部科学省や経済産業省から補助金を引き出せるか?」という観点が重視されているかに見られる点である。
いうまでもなく、多様なキャリアパスとそれを支える社会人教育制度についての社会的認識が流動化することを前提に、それを先取りする形で専門職大学院設立が進むことが望ましいだろう。
その観点から、本書は興味深い議論のネタを、素材として提供してくれている。


榊原氏の新書版の概論や入門書が読みやすいのは、著者の基本認識と議論の流れを、いつも冒頭に整理し提示してくれることだ。
それぞれの章も、この章で著者は何をとりあげ、何を語りたいのかを明らかにすることからはじまる。
そのガイドに従えば、抵抗なく議論が頭に入ってくる。

著者の会話のスタイルの特徴は、「対話を通じての自問自答」にあるとぼくは思っている。
著者と話していると、問わず語りにその時頭の中を占めている問題意識の周辺の話題を切り出すことがある。そんな時は対話しているというより、テニスの壁打ちのように、自問自答するための壁として対話相手を利用しているのだ。絶対にそうだ。
そんな思索のプロセスがあることから、読者にとって理解しやすい議論の流れを紡ぎ出せるのだろう。

榊原さん
ご無沙汰ばかりで、最近壁打ちをご一緒してませんね。
機会があれば、また、雑談を聞かせてください。