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2006年01月30日(Mon)
< キャリア転機の戦略論 | 経営/一覧 |  
サステナブル時代のコミュニケーション戦略

宮田穣:同友館

個人的感慨から語らせて欲しい。団塊の世代に属する私は、1971年に大学を卒業し社会に出た。オイルショックの影響で日本経済が翳りを見せる74年までの僅かな間、高度成長の名残を垣間見た。
新入社員の目からみても熱気に溢れた時代だった。モーレツビジネスマンが家庭をなげうって仕事に没頭し、会社の成長と日本経済の発展と、自らの生活の向上という3つの果実をともに享受することが出来た。
公害問題などの萌芽をその陰に宿していたとはいえ、個人目標・組織(企業)目標・社会(国家)目標が同心円を描く、幸せな時代だったといえるだろう。
同じ同心円構造を「坂の上の雲」にも読み取ることが出来る。司馬遼太郎は明治期を、個人の抱いた青雲の志が、そのまま組織と国家の発展とつながる、勃興期特有の牧歌的な時代として描き出している。疑うことを知らぬまま邁進することを許された時代である
オリンピックを控えた今の北京や上海にも同様の傾向があるのかもしれない。

しかし、今日の日本を眺めると、個人と組織と社会のベクトルはまちまちだ。
IT化、企業の多国籍化、地球環境問題がグローバルなステージを用意する中、国家の役割が問われ、国のアイデンティティはクライシスに瀕しているかに見えるし、企業は社会的使命を問い直し、ガバナンスや雇用形態、ヒエラルキー構造など、旧来の経営パラダイムそのものを疑いだしている。団塊の世代は定年後の不安におびえ、若年層は閉塞状況の中、目標の喪失に悩んでいる。
若者の「自分探し」を嗤うことは出来ない。個人も組織も社会もおしなべて「自分探し」の戸惑いのさなかにあると言えないだろうか。

こうした中で、著者が新しい時代の企業経営パラダイムとして提示するのが『サステナブル企業』である。
『サステナブル企業』は本書では次のように定義されている。
「経営理念として企業の社会的責任(CSR)を重視し、トリプルボトムライン(経済面・環境面・社会面)を事業活動の基本機能として組み入れており、NPOとのパートナーシップを推進することでサステナブル社会の実現と事業発展の両立を目指している企業」
『サステナブル企業』は、70年代半ばから注目されてきた「コーポレートシチズンシップ」を備えた企業の系譜に連なるものだろう。しかし、エルキントンの主唱するトリプルボトムラインを取り入れたところに本書の特徴があり、それ以上にNPOとのパートナーシップを積極的に評価するところが著者独自の新しい見解といえるだろう。
事業による収益性を重視する企業と、社会的使命感に基づく活動性を追及するNPO。この両者が共通の社会的問題解決を目指して協業するプロセスで、相互作用を通じて双方の価値観が変容を遂げ、社会の論理と企業の論理とNPOの根底にある個人の論理の融合が進むのではないかと説くのだ。
ここで、著者はこの協業の企業側とNPO側それぞれの担当者に注目する。「つなぎ手」と名づけられた彼らは、双方の組織および社会そのもののチェンジエージェントとして機能すると指摘している。
私は、個人と組織と社会のベクトルを併せようとするとき、慣性の法則に支配された組織自らが変革の起点となることは望み薄であり、その原動力となるのは個人のエネルギーだろうと思う。
その個人として私は、経営者・起業家とならんで自律した市民に注目している。その点、著者のいう「つなぎ手」の可能性に期待したいと思っている。NPOが玉石混交とはいえ、新しいポテンシャルを持っていることは疑いないだろう。

本書は、著者の博士論文を一般向けにまとめ直したものである。元になった論文は03年から04年初頭に書かれている。CSRの一般化前夜の状況がレポートされており、ブームに雷同することなくきめ細かな事実やデータを積み重ね、CSRの本質を考察した好著といえる。